ピロリ菌は、上下水道の整備が進んでいない上に衛生環境の悪かった50歳以上の感染率が高い事や成人が大量のピロリ菌を経口摂取しても菌の定着が見られない事から、ピロリ菌に対する免疫が不完全な幼児期の菌に汚染された生水の飲用や親が噛み砕いた食べ物を口移しで摂取したなどの感染経路が疑われています。その為、上下水道が完備され衛生環境が飛躍的に向上した日本国内のピロリ菌の感染率は、低年齢ほど低くなっています。
ピロリ菌は、胃粘液に含まれる尿素を二酸化炭素とアンモニアに加水分解し、分解した強アルカリ性のアンモニアでピロリ菌周辺の胃酸を中和する事で生存を可能にすると共に胃粘液層内にコロニーを形成し、プロテアーゼなどの酵素毒素や増殖阻害性等の毒性モノクロラミンになどの毒素により胃粘膜を傷付け、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫などの発症リスクを高めるとされ、特に胃ガンの発ガンリスクを20倍以上に高めてしまうので除菌の必要性があります。実際に世界保健機関では、除菌治療で30%?40%の胃癌予防効果があると報告しています。
日本国内では、平成12年11月よりピロリ菌の1次除菌療法の医療費に保険が適用され、平成19年8月より2次除菌療法、平成22年6月に胃・十二指腸潰瘍やMALTリンパ腫及び特発性血小板減少性紫斑病、平成25年2月にピロリ菌が誘発する委縮性胃炎や化生性胃炎などの慢性胃炎の除菌療法に対しても保険が適応となっています。ピロリ菌は、迅速ウレアーゼ試験や鏡検法、培養法、抗体測定、尿素呼気試験、糞便中抗原測定などの検査に加え胃内視鏡検査により感染の有無を検査するだけで無く、胃の粘膜の萎縮性変化や腸上皮化生などの変化で胃がんのリスクも診断しています。